法改正がもたらす仲介手数料の変化と影響

2024年7月に、不動産取引における仲介手数料の制度が大きく変わりました。特に空き家や低価格物件を売却しやすくなることを目指したもので、空き家などを所有する人の負担軽減と不動産市場の活性化が期待されます。

 

2024年の仲介手数料に関する法改正の背景

近年、日本各地で空き家が増加し続けており、その数は全国で約900万戸に達しています。地方都市では特に、資産価値の下落により売却するのが難しい物件が増えている状況です。

 

これまでの仲介手数料の仕組みでは、低価格物件の場合、不動産会社が負担する調査費用や手続き費用と比較して手数料収入が少なく、積極的な仲介が難しいという課題がありました。

 

こうした状況を改善して不動産会社が低価格物件も積極的に取り扱えるよう、制度の見直しが入りました。この改正により、特に地方の空き家や古い物件の流通促進が期待されています。

 

仲介手数料に関する新しい特例の概要と適用条件

新制度では、売値800万円以下の物件について、不動産会社は売主と買主からそれぞれ最大33万円(税込)の手数料を受け取ることが認められています。ただし、不動産会社が手数料を受け取るためには以下の条件を満たすことが必要です。

 

まず、顧客と媒介契約を締結するときにあらかじめ特例について説明し、顧客の同意を得ることが必要です。また、不動産会社は実際にかかった調査費用や広告費用などの明細を提示することも求められます。

 

法改正による仲介手数料への影響例

具体的な例で見てみましょう。従来の制度では、例えば600万円の物件を売却する場合、仲介手数料は26万4,000円(税込)が上限でした。しかし新制度では、適切な調査や広告活動にかかる費用を含めて最大33万円まで受け取ることが可能となります。

 

一方で、800万円を超える物件については、従来どおり売買価格の3%+6万円に消費税を加えた金額が仲介手数料の上限です。例えば1,000万円の物件なら、約39.6万円(税込)が上限となります。この従来のルールは継続されるため、高額な不動産の取引においては手数料の大幅な変動はありません。

 

安すぎる仲介手数料に要注意!失敗しない不動産会社の見分け方

不動産会社を探すときに「仲介手数料半額」「業界最安値」などの広告文句に興味を引かれる方も多いかもしれません。しかし、不当に安い手数料を提示する不動産会社と取引することで、売却活動に支障をきたすケースもあります。ここでは、手数料の安さだけで不動産会社を選んでしまうリスクと、信頼できる会社の見分け方について解説します。

 

仲介手数料が安い不動産会社を選ぶリスクとは?

仲介手数料を極端に安くしている不動産会社では、適切な売却活動が行われないケースが少なくありません。例えば物件の広告掲載が限定的になった結果、買主候補への露出が減少することもあるでしょう。

 

結果的になかなか買主が見つからず、市場価格より大幅に安い金額での売却を余儀なくされることにもつながります。

 

また、査定時には安い手数料を提示しながら、買主と売買契約を締結した後になってから「特別な広告費用」「現地調査費用」などの名目で追加費用を請求されるケースも報告されています。

 

例えば2,000万円の物件であれば、仮に仲介手数料を20万円安くできたとしても、物件の売却価格が100万円下がってしまえば、売主にとっては80万円の損が出たのと同じです。

 

手数料が安いと、その分対応が雑になるということもあり得るため、仲介手数料の安さだけで不動産会社を選ぶのは危険です。

 

信頼できる不動産会社の選び方

信頼できる不動産会社を選ぶためには、まず査定時の対応を重視します。査定の具体的な根拠を示しながら丁寧に価格を説明してくれる、エリアの取引事例や市場動向について詳しい知識を持っている、などの点がポイントとなります。

 

また、実際の取引実績も重要な判断材料です。特に自社ウェブサイトで過去の売却事例を公開している、具体的な販売戦略を提案してくれる、などの特徴を持つ不動産会社には、透明性が高く誠実な対応を期待できます。

 

また、担当者の対応スピードも見逃せないポイントです。電話やメールの返信が早く、こまめに連絡を取ってくれる不動産会社は、売却活動においても積極的なサポートを期待できます。一方で、例えば初期対応が遅い、約束の時間を守らない、といった不動産会社は避けたほうが無難でしょう。

 

契約前には必ず複数の不動産会社から査定を受け、それぞれの対応や提案内容を比較検討するのがおすすめです。仲介手数料の安さに惑わされず、総合的な視点で不動産会社を選ぶことが売却成功への近道です。

 

仲介手数料を賢く管理するための媒介契約の選び方

不動産売却において、売主は不動産会社と締結する媒介契約を3種類の中から選べます。そして、媒介契約の選択は売却活動の進め方や手数料に大きく影響します。契約内容によって、不動産会社のモチベーションやコミュニケーションの頻度などに違いが出るためです。

 

仲介手数料に影響する媒介契約の種類と特徴

一般媒介契約は、複数の不動産会社へ同時に売却を依頼できる契約形態です。各社が別々に買主を探すため、より多くの候補者に物件を紹介できる可能性があります。

 

ただし、不動産会社側から見ると、買主を見つけても仲介手数料の獲得につながらない可能性もあるため、売却活動が消極的になりがちです。結果的に売却期間が長引くこともあり得ます。

 

専任媒介契約では、1社に売却を任せることで、より積極的な営業活動を期待できます。不動産会社は、不動産情報ネットワーク(レインズ)への物件情報の登録が義務付けられており、売主に対する2週間に1回以上の活動報告も必要です。この定期報告により、売主は売却活動の進捗を把握できます。

 

専属専任媒介契約はもっとも強い拘束力を持つ契約です。不動産会社は売主に対する週1回以上の活動報告義務があり、レインズへの登録も5日以内にしなくてはなりません。専属専任媒介契約は不動産会社がもっとも力を入れて取り組んでくれる契約形態といえます。

 

各媒介契約のメリット・デメリット比較

一般媒介契約のメリットは、複数の不動産会社を競わせることで、よりよい条件での売却を目指せる点です。さらに、売主が自分で買主を見つけた場合は、不動産会社の仲介を受けずに自分で売買手続きを進められます。この場合は仲介手数料が発生しません。

 

一方で、各社が別々に売却活動を行うため、売主にとっては不動産会社とのコミュニケーションが増えるほか、各社の販売戦略を管理する必要があるなど対応が煩雑になります。

 

また、そもそも不動産会社は売主に対する活動報告の義務を負わないため、売主側からコミュニケーションを取りにいかなければならないこともデメリットとなります。

 

専任媒介契約では、1社に専任で任せることで、物件情報の一元管理が可能です。統一された価格での広告展開により、買主に対して混乱のない情報提供ができます。自分で購入希望者を見つけた場合は、不動産会社の仲介なしで売却することが可能です。

 

専属専任媒介契約は、不動産会社の責任がもっとも重くなる契約です。売主が自分で購入希望者を見つけた場合でも、不動産会社の仲介を受けなければなりません。不動産会社の提案する販売戦略に全面的に委ねることになりますが、不動産会社も最優先で売却活動を行ってくれるため、丁寧な対応や早期売却を期待できるでしょう。

 

媒介契約選びのコツ

媒介契約を選ぶ際は、まず自身の売却に関する優先事項を明確にすることが重要です。例えば、早期売却を重視する場合は専属専任媒介契約が適しています。不動産会社の全面的なバックアップを受けられるため、スピーディーな売却が可能です。

 

一方で、時間的な余裕があり、よりよい条件での売却を目指したい場合は、一般媒介契約も選択肢となります。間を取りたいのであれば専任媒介契約を選ぶとよいでしょう。

 

なお、専任媒介契約専属専任媒介契約では3カ月が標準的な契約期間となっています。この期間内で売却できなかった場合は、契約の見直しや他社への変更を検討することも可能です。

 

不動産売却の仲介手数料に関するよくある疑問

手数料はいつ支払うのか、予期せぬ追加費用は発生しないのか、途中で契約を解除したらどうなるのかなど、さまざまな疑問に対して、具体的な事例を交えながら解説していきます。

 

手数料が発生するタイミングと支払い方法

仲介手数料は、買主との売買契約が成立した時点で発生します。ただし、実際の支払いは「買主との売買契約時」と「家の引き渡し時」の2回に分けて行うのが一般的です。多くの場合、売買契約締結時に手数料の半額、残りの半額を物件引き渡し完了時に支払います。

 

支払い方法は、通常は不動産会社の指定する銀行口座への振込となりますが、売買代金から相殺する形を取ることもあります。

 

なお、仲介手数料の発生は「売買契約の成立」が条件となるため、単に媒介契約を結んだだけでは手数料は発生しません。買主が見つからず売却できなかった場合は、手数料を支払う必要はありません。

 

追加費用が発生するケースと回避方法

通常の売却活動に伴う広告費用や営業活動費は、仲介手数料に含まれています。しかし、売主の特別な要望により、以下のような追加費用が発生する場合があります。

 

・新聞や雑誌への広告掲載費用

・遠方の買主との商談に伴う出張費用

・専門家による物件調査費用

・特別なプロモーション費用

 

特に注意が必要なのは「実費請求」の名目で提示される費用です。これらの追加費用発生を避けるためには、不動産会社と媒介契約を締結する前に、標準的なサービス内容を確認することが重要になります。

 

なお、仲介する不動産会社が追加費用を請求できるのは、あらかじめ売主に了承を得た場合のみと定められています。追加費用が発生し得る依頼をする場合は、必ず内容や費用について書面に残しておきましょう。

 

媒介契約解除時の手数料の扱いについて

媒介契約を契約期間中に解約する場合、売買契約が成立していない段階であれば原則として仲介手数料は発生しません。仲介手数料は、売買契約が成立した場合に限り発生するためです。

 

しかし、専属専任媒介契約または専任媒介契約の契約期間中に解約する場合、違約金が発生する可能性があります。よくあるケースが、契約期間中にほかの不動産会社と契約し、乗り換える形で解約を行った場合です。

すでに解説した通り、これらの契約は特定の1社と契約することを想定したものであるため、違反すると違約金を支払う必要が出てきます。

 

一方で、不動産会社が報告を怠っていたり、契約で定められた業務を果たしていなかったりと、不動産会社側に問題があって解約する場合は、違約金を支払う必要はありません。

 

なお、一般媒介契約では契約期間がそもそも定められていないため、契約内容に違約金の記載などがない限り、ノーリスクで解約することができます。

 

グラングッド不動産の売却サービスについて

グラングッド不動産では、売主様の立場に立った透明性の高いサービスを提供しています。特に福岡県内での「地域密着」を強みとし、エリアの最新取引事例や価格動向を生かした適正価格での売却をサポートします。

 

具体的なサービスの特徴として、以下の3点が挙げられます。まず、宅地建物取引士や相続診断士による専門的なアドバイスの提供です。相続・贈与・空き家の処分など、さまざまな不動産に関する課題に対してワンストップでサポートしています。

 

次に、充実した情報発信力です。自社ウェブサイトはもちろん、大手不動産ポータルサイトへの無料掲載により、3,000件以上の物件情報を発信しています。幅広い購入層へのアプローチが可能です。

 

さらに、取引完了後のアフターフォローまで一貫したサポート体制を整えています。売却後に発生する可能性のある諸手続きについても、専門家による適切なアドバイスを提供します。

 

実際の成約者様からは93.3%という高い満足度を得ており、特に地域の実情を熟知した提案力には定評があります。ご売却をお考えの方は、まずは無料査定・相談からお気軽にご利用ください。

 

まとめ

2024年7月からの法改正により、特に800万円以下の物件については新たな特例が設けられ、より柔軟な取引が可能になりました。

 

仲介手数料は取引の成立後に発生し、一般的に契約時と引き渡し時の2回に分けて支払います。ただし、極端に安い手数料を提示する不動産会社には注意が必要です。見かけの手数料は安くても、売却価格が大幅に下がってしまっては本末転倒だからです。

 

媒介契約の選択も重要です。自身の状況や優先事項に合わせて最適な契約形態を選びましょう。また、契約内容や手数料の発生条件については、必ず事前に詳しく確認することをおすすめします。