不動産投資を始めようと考えたとき、「空室が出たらどうしよう」、「思ったような利回りが得られないかも」、「修繕費用がかさんでしまうのでは」など、さまざまな不安が頭をよぎることでしょう。特に不動産投資は他の資産運用と比べて投資額が大きいため、慎重に検討したいと考える人も多いのではないでしょうか。
しかし、適切な知識を身につけ正しい物件選びができれば、不動産投資は安定的な収入を得られる投資方法です。例えば、立地条件の良い物件を選ぶことで空室リスクを抑えることができ、物件の状態を見極めれば予期せぬ修繕費用の発生も防げます。
この記事では、不動産投資を成功させるために必要な基礎知識から、初心者でも失敗しない収益物件の選び方、具体的なリスク回避の方法まで、実践的な情報をお伝えします。

収益物件とは?初心者向けの基本ガイド

収益物件とは、賃貸運用による家賃収入の獲得を目的として購入する不動産のことです。主にアパートやマンション、一戸建て住宅などを購入して運用し、毎月の家賃収入によって投資利益を上げていきます。購入者自身が居住することを目的とせず、純粋な投資用の不動産として位置づけられています。

収益物件の種類と特徴

収益物件は大きく分けて以下の3種類があり、それぞれに特徴があります。
・ アパート・マンション・一戸建て住宅(住居)
一般的に不動産投資というと、住居を運用する投資手法のことを指します。投資初心者向けとして多く販売されているのはワンルームマンションです。
単身者向けの需要が安定しており、比較的少額から投資を始められます。そのほか管理もシンプルな点などがメリットです。一方で1部屋しか運用していない場合は、1度退去がされてしまうと次の入居者が入ってくるまで利益が上がらない点などがデメリットです。
アパート運用であれば、複数の部屋を同時に賃貸運用するため、たとえ1部屋空きが出ても赤字運用になることは滅多にありません。しかし、物件の購入費用が多くかかる点などはデメリットです。
・ オフィスビル(事務所用
法人を借主とするため、長期契約を期待できるうえに賃料の滞納リスクも比較的低いのがメリットです。ただし、物件価格が高く景気変動の影響によって収益の安定性が左右されるため、投資初心者には向いていません。
・ 店舗・商業施設
飲食店やコンビニなどのテナントとして賃貸する物件です。物件の立地条件が良ければ高利回りを期待できます。一方で、賃貸借契約が複雑なうえにテナントの経営状況によって運用の安定性が左右されるため、相応の運用経験や専門知識が必要です。

新築物件と中古物件の比較

収益物件を選ぶ際、新築と中古のどちらを選ぶかは重要なポイントとなります。新築物件と中古物件のメリット・デメリットは以下の通りです。

【新築物件のメリット】

・ 当面の修繕費用が抑えられる
最低でも5年程度は大きな修繕が不要なので修繕コストを抑えられます。
・ 高い賃料設定が可能
新築物件は人気が高いため、物件によっては相場より2割程度高い家賃を設定できることもあります。
最新の設備が整っている
多くの新築物件には、宅配ボックスやオートロックなど、現代のニーズに合った設備が標準装備されています。

【新築物件のデメリット】

購入価格が高い
同じ広さ・立地の中古物件と比べて価格が3割以上高くなることもあります。
・ 利回りが低くなりがち
購入価格が高い分、家賃収入の利回りは3%~4%程度にとどまり、ローンを利用して購入すると手残りが出ないことも少なくありません。

中古物件のメリット

・ 購入価格が比較的安い

新築物件と比べて3~4割程度安い価格で購入できるため初期投資額を抑えられます。
・ 高い利回りを期待できる
物件の購入価格が安いため高い利回りも狙えます。
・ 物件を購入する前に運用実績を確認できる
過去の入居率や収支状況から、より現実的な収益予測が可能です。
・ リノベーションによる価値向上の余地がある
設備交換やリノベーションによって家賃を相場より2~3割上げられる可能性もあります。

【中古物件のデメリット】

・ 修繕費用の発生頻度が高い
給湯器の交換(30万円程度)など予期せぬ支出が発生することも多くなります。
・ 設備が古い
特に築年数が20年を超えてくると設備の一斉更新を要することもあります。
・ 空室リスクが高まる可能性がある
近隣に新築物件が建つと入居者が流出するリスクもあります。
投資初心者は、まずは中古物件から始めることをおすすめします。購入価格を抑えられる分、リスクも軽減できるためです。駅から徒歩10分以内の物件であれば、築古の物件でも賃貸需要を見込めるでしょう。
なお、物件購入の予算に余裕がある場合は、築5年以内など築浅の中古物件を狙うのも1つの手です。新築物件より2~3割安い価格で購入できるほか、当面の修繕費用を抑えられるため安定した収益を期待できます。

収益物件の選び方(立地・利回り・管理が成功の鍵)

収益物件の選び方

収益物件の投資で成功するかどうかは、物件選びの段階でほぼ決まってしまうと言っても過言ではありません。特に重要なのは「立地」「利回り」「管理」の3つの要素です。これらを適切に見極められれば安定した収益が期待できます。

高利回り物件の選び方とチェックポイント

高利回り物件を見極めるポイントは、表面的な利回りだけでなく、実質的な収益性にもあります。利回り計算の基本式は以下の通りです。
表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 × 100(%)
実質利回り = (年間家賃収入 - 経費) ÷ 物件購入価格 × 100(%)
ここで重要なポイントは経費をしっかりと見積もることです。不動産投資にかかる主な経費には以下のようなものがあります。
・ 固定資産税(土地・建物の評価額の1.4%程度)
・ 賃貸管理費用(家賃収入の5~10%)
・ 修繕積立金(家賃収入の10~15%が目安)
・ 火災保険料(年間2~3万円程度)
・ ローン返済元本と支払金利(金利により変動)

立地条件が収益に与える影響

立地は収益物件の価値を決める最も重要な要素です。立地が良いエリアとは、例えば以下のような特徴を持っているエリアのことを指します。
交通アクセス
・ 最寄り駅まで徒歩10分以内
・ オフィスが集まる主要な駅まで30分以内で行ける
・ バス利用が必要な場合はバス停まで徒歩3分以内で行ける
生活利便施設
・ スーパーやコンビニまで徒歩5分以内の距離
・ 病院や郵便局が徒歩圏内にある
・ 周辺に飲食店や商業施設などが充実している
周辺環境
・ 大学や大きな企業のオフィスが近隣にある
・ 近隣で再開発の計画が持ち上がっている
・ 治安が良好
これらの条件を満たす物件は、多少家賃を高めに設定しても賃貸需要を見込めます。特に、大学や大手企業オフィスの近隣エリアは安定した入居需要を期待できるため、空室リスクを低減できるでしょう。
ただし、大学のキャンパスは移転してしまうこともあるので要注意です。反対にキャンパスが移転してきたばかりの場合は安定した収益を期待できるでしょう。
なお、文系学部しか入っていないキャンパスが近い場合は、4年で退去が発生する恐れもあります。一方で、薬学部など理系の学部と大学院も入っているキャンパスが近い場合は、10年程度入居が安定する可能性があるでしょう。

管理の重要性と失敗しない管理会社の選び方

収益物件の運用において管理会社の選定は非常に重要です。例えば以下の特徴を持つ管理会社は良い会社といえるでしょう。
・ 入居者を連れてくる力がある(客付け力がある)
・ 家賃滞納の適切な防止策を提案してくれる
・ 適切な修繕工事の提案をしてくれる
・ 入居者からのクレーム対応が的確
管理会社を選ぶ際のチェックポイントは以下の通りです。
基本的なチェックポイント
・ 創業年数(最低でも10年以上)
・ 管理物件数(100件以上が目安)
・ 営業エリア(物件周辺での実績)
・24時間対応体制の有無
重要な確認事項
・ 管理手数料の料率(一般的に家賃の5%程度)
・ 入居者審査の基準
・ 空室時の対応策
・ 修繕工事の見積もり方針
・ 会社の財務状況の健全性
なお、以下のポイントが見受けられる場合は要注意です。
・ 極端に安い管理手数料
・ 過度な一括借り上げの提案
・ 過剰な利回り保証
・ 強引な修繕工事の提案
管理会社を比較検討するうえでは、できるだけ複数の会社から見積もりを取り、サービス内容や手数料を比較するのがおすすめです。また、すでに管理を委託している近隣の収益物件のオーナーが見つかれば、管理会社の評判を聞くことによって、より正確に判断できるでしょう。

収益物件のリスクと回避策

収益物件のリスクと回避策

不動産投資にはさまざまなリスクが存在します。特に注意すべきリスクは、空室リスク、賃料下落リスク、予期せぬ修繕費用の発生です。
しかし、最悪のケースを想定した資金計画を立てておけば、不動産投資で失敗するリスクを軽減できます。例えば、3ヶ月程度の空室期間が発生しても経営が成り立つよう、余裕を持った資金計画を立てるなどがおすすめです。

空室リスクを最小限に抑える方法

空室が発生すると家賃収入を得られない一方で、管理費や固定資産税などの固定費は継続して発生するため、収支が大きく悪化します。空室リスクを抑えるためには、例として以下のような対策が効果的です。
○入居者ターゲットの明確化
・ 単身者向け:駅までの所要時間が短く充実した収納のある物件を選ぶ
・ ファミリー向け:独立キッチンなどの設備や防音性能などにこだわる
・ 学生向け:大学までの通学時間と家賃の手頃さに着目する
○競合物件との差別化
・ 無料でインターネットを利用できるサービスの導入
・ 宅配ボックスを設置する
・防犯カメラを増設する
・ ペット飼育ができる物件にする(退去後のクリーニングなどに要注意)
○家賃設定の工夫
・ 周辺相場の95%程度に設定する
・ 契約更新時にオプションをつけるなど柔軟な対応を意識する
・ 礼金や更新料を減額または撤廃する

賃料下落を防ぐリノベーション・設備投資のコツ

よほどの好立地の物件でない限り、築年数の経過とともに賃料は必ず下がっていきます。
しかし、適切なリノベーションや設備投資をすることで、賃料の下落幅を最小限に抑えられるでしょう。有効なリノベーションや設備投資は以下の通りです。
・ キッチン:対面カウンターは物件のアピールポイントになる
・ 浴室:追い焚き機能や浴室乾燥機は入居者から人気が高い
・ フローリング:住戸の全体的な清潔感向上による賃料アップを狙える
・ エアコン:全室設置で賃貸需要の拡大を狙える
・ システムキッチン:高い収納力が女性入居者から人気
・ 宅配ボックス:共用部に設置すれば生活利便性の向上につながる
リノベーションや設備投資の可否について判断するポイントとしては、投資回収期間を3年以内に設定することが重要です。一定期間のうちに費用を回収できなければ、投資する意味がありません。
なお、設備投資をするうえでは、入居者の要望を重視した設備を選定する必要があります。また、近隣の競合物件にはどんな設備が入っているのか、事前にインターネットで確認してみるのも有効です。

長期的な修繕・維持費を考慮した投資計画

収益物件の修繕・維持費用は、築年数の経過とともに増加していきます。計画的に資金を準備しておかないと突発的な修繕に対応できず、資産価値の低下につながるでしょう。築年数別の主な修繕項目は以下の通りです。
築5年~10年 壁紙クロスの張り替え
排水管洗浄
築10~15年 給湯器の交換
エアコンの交換
築15~20年 ユニットバスの交換
玄関ドアの交換
積立の目安としては、家賃収入の10%前後を想定すると良いでしょう。ただし、築年数の経過に応じて積立率を上げておくと安心です。また、あらかじめ修繕計画を策定しても、5年ごとなど定期的に見直すことが必要になります。

購入後に直面する税金とローンの疑問を解決

購入後に直面する税金とローンの疑問を解決

収益物件の購入・運用にあたって、税金とローンの問題に不安を感じる人は多いのではないでしょうか。一方で、上手く経費を活用すれば節税につなげることも可能です。
初めて収益物件を購入する方は、税理士に相談することをおすすめします。特に初年度は、減価償却の計算方法や必要経費の範囲など、専門的な知識が必要となる場面が多いためです。手数料はかかりますが、税理士に支払う手数料も経費にできるため、メリットは大きいと言えるでしょう。

不動産投資ローンの基礎知識

一般的な住宅ローンと異なり、不動産投資ローンの金利は高めに設定されています。投資目的の融資となり、金融機関側のリスクが高く見積もられるためです。
審査も住宅ローンと比べて厳格です。一般的に年収の25%程度までが返済額の上限とされ、投資用物件の場合は物件価格の70~80%程度までが融資限度額となります。ただし、資産状況や勤務先・勤続年数などによって融資限度額は変わるため、まずは金融機関に相談してみると良いでしょう。

減価償却や節税対策のコツ

減価償却制度は、建物の価値が経年劣化により目減りしていく分を必要経費として計上できる制度です。木造建築の場合は22年、鉄筋コンクリート造の場合は47年にわたって償却できます。
なお、例えば木造の建物で築年数が23年以上の場合は、4年で償却することになるので、1年当たりの償却額がかなり大きくなります。ただし、減価償却の対象となるのは建物の価格のみなので、収益物件の購入時に建物の価格と土地の価格を分けて把握することが必要です。
また、収益物件の維持管理にかかる費用も経費として認められます。日常的な修繕費用や管理会社への委託費用、火災保険料なども経費計上が可能です。さらに、物件の付加価値を高めるリフォーム工事なども、一定の条件下で経費として認められます。

まとめ

適切な知識と準備があれば、収益物件の投資運用は安定的な収入を得られる資産運用方法です。成功の鍵となるのは、立地条件の見極め、物件の状態確認、そして長期的な資金計画の3つです。
特に初めて投資を行う場合は、利回りだけでなく、将来的な修繕費用や管理の手間なども考慮して物件を選ぶことが重要になります。
さらに、空室の発生や予期せぬ修繕費用の発生など、さまざまな事態を想定した資金計画を立てておくことも重要です。リスクケアをしたうえで、減価償却制度などを活用した節税対策も行えば、高い収益を確保できるでしょう。